「日本人が、ノーベル賞を受賞した!」
そんな速報が出るやいなや、
ネットのタイムラインはお祝いムード一色。
街中では号外が配られ、テレビも雑誌も大急ぎで特集を組み立てます。
もちろん、それは誇らしくて、お祝いすべき出来事です。
でも、受賞者が日本人じゃなかったら?
それが人類にとって大きな偉業であっても、
たった1つのトピックスとして、収まってしまうことがあります。
たとえ、多くの人の生死に関わる問題であったとしても、
メディアは、優先度を誤ってしまいがちです。
おかしな話ですよね。
今から伝えたいのは、もう11年も前のこと。
2005年の、ノーベル賞の話です。
医療系の方はご存知でしょうし、
そうでなくても、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。
オーストラリアのバリー・マーシャル博士と、ロビン・ウォレン博士が、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
二人の、ノーベル賞受賞までの道のりはこんな感じです。
1984年に、彼らは
「胃酸の中でも生存する細菌、”ヘリコバクター・ピロリ”がいる!」
という仮説を立証しました。
それまで、「胃の強酸の中で、細菌なんて生きられないに決まってるじゃん(笑)」と、彼らの実験そのものが冷笑されていました。でも、マーシャル博士は自らピロリ菌を飲んで胃炎になるという身体を張った実験を行い、その仮説は確かなものに。
その10年後に世界保健機構は、「ピロリ菌は胃がんの原因である細菌だ」と認定。
その発見は、世界中の医者を騒然とさせました。
だってそれまでの常識は、こんな感じ。
「胃がんは、食事などの生活習慣や遺伝が原因だから、防ぎきれないものでしょう」
全然、違ったんです。
胃がんは、その99%が「ピロリ菌」による感染症。
つまりそれを発見し取り除けば、未然に防ぐことが可能な病気だったんです。
(※ピロリ菌と逆流性食道炎や食道がんの関係性について一部お問い合わせをいただいたため、文末に追記させていただいております)
そんな「ピロリ菌」の第一発見者である
バリー・マーシャル博士と、ロビン・ウォレン博士には、
2005年、ノーベル賞が贈られたのです。
そんな受賞からも10年以上がたった今。
日本では年間約5万人の方が、胃がんで命を落としています。
どうしてなのか?
「ピロリ菌が胃がんの原因である」という
事実の一般認知度が、あまりにも低いんです。
義務化されてもいいような検査が、個人依存で行われているんです。
ピロリ菌を発見するための簡易検査にいくらかかるのか、ご存知ですか?
ほんの数千円で、誰でも、ネットでも検査キットを買うことが出来るようになっています。
胃がんになってからの治療費とは、比べるまでもありません。
そんな状況があるのに、知られていない。
予防するための医療制度も、全然整ってない。
そこで今回この「予防医療普及委員会」を立ち上げることになりました。
組織名が長く堅苦しいのですが、どこかの医療団体でもなく、行政でもなく、有志の集まりです。
一人目の発起人は堀江貴文。彼の思いはこんなところです。
堀江「胃がんは感染症だって記事が、ニュースアプリで流れてきたから読んでたんです。
その内容が気になったから、国立国際医療研究センターの理事である上村直実さんにアポを取って、インタビューしました。話を聞けば聞くほど、衝撃でした。だって、とても簡単に防げる病気で命を落としてしまっている方が何万人といる。僕のまわりにも、胃がんで命を落としてしまっている人がいた。それがまさか、感染症だったなんて。認知度が低すぎる。おかしいでしょ。
僕は医療関係者でも何でもないです。でも、『おかしいでしょ』って思いを伝えるのは得意とする部分。
それで今回、医師の加藤浩晃先生や、GREEの荒木英士さん、PARTYの中村洋基くん、他にも医療やクリエイティブの分野からたくさんのメンバーに賛同してもらって、このプロジェクトを立ち上げることにしました。
色々調べてみると、日本の医療制度にはたくさんの突っ込みどころがある。病気になってからじゃないと、医者にかからない。病気後の治療だけがマーケットになってる仕組み自体も、おかしいでしょう。予防医療を普及させれば、そもそも病気にならないのに。
もっと予防医療を普及させるべきなんです。
その中でも一番最初にやるべきは、この『ピロリ菌』の認知度向上とか、検査の普及だと思ってます。
同じように、現状がおかしいと思ってる仲間が集まってくれて、すごくいいチームが出来つつあります。ですがこの組織を回すための最低限のマネタイズすら、出来てません。だからひとまずはクラウドファンディングで運営資金を募ることにしました。」
ーーそしてプロジェクトメンバーの最若手ながら、フロントで頑張るのは医学生の荘子万能君(写真左)。
荘子「僕はまだ医学生であって、医療者ではありません。まだ医者としての言葉は出せないけど、でも医学を学んでいる途中だからこそ、ちょうど医療関係者とそうではない方々の架け橋みたいな存在にはなれるんじゃないかな、って思うんです。
医学を学んでいると、その過程で驚くことが多々ありました。医療界における最新の知識と、そうではない方々が「これが常識」だと思っていることに、大きな誤解や、隔たりがあるんです。
だからこのプロジェクトの話を聞いたときに『これだ!』と思って、学生ではありますが、参加させてもらうことにしました。
僕は将来、病院の中のお医者さんになるために勉強しています。でもそれ以上に、『社会の中のお医者さん』にも、なりたいんです。
予防医療は日常的に出来ることです。だから、もっともっと予防医療を普及させたい。そうすると、病気にならず、高額な医療費を必要とする方が減るはずなんです。そして難病の方々に、より医療費が行き渡るようになるかもしれません。理想論に聞こえるかもしれないですが、そんな社会をつくることが、ぼくの目標です」
ーーホリエモンと、医大生。このなんともデコボコ感のある二人をまとめるのは、眼科医の加藤浩晃先生です。
加藤「まさに僕が荘子君くらいのときに、ピロリ菌の発見に対してノーベル賞が授与されました。でも医療関係者の中では当たり前のことなので、その認知度が低いということすら、僕らはあまり意識していなかったかもしれませんね。
ただ僕自身、日頃眼科医として患者さんと触れ合っていると『事前に知識があれば、この病気を予防したり、早期発見したりできたのに…』という憤りを抱くことが多々あります。今回のプロジェクトの対象となっている胃がんの他にも、対策を立てられる病気は、たくさんありますから。
荘子君が言う通り、医療関係者と、そうではない方々の間には、あまりにも知識の溝がありすぎるんです。
その溝を埋めようと僕らも公開講座をしたり、本を出したりするんですが、そもそも、そこに興味を持ってくださるのは健康に対する意識が高い、一部の方々なんです。
でも、健康に対する意識が低いからといって、「興味がなかった」「知らなかった」では済まされないでしょう。
そして、社会一般的に知られている予防医療や、インターネットで検索上位に来るものの中には『水さえ飲めば大丈夫!』だなんて胡散臭いものも多数あります。
だから、医療の正しい知識を伝えたいですし、その知識を社会全体とつなげたい。
僕たちは医療の専門家として。そして堀江さんたちは、プロモーションの専門家として。
今までとは違う方法で、協力し合いながら伝えていく必要は、十二分にあると思いました」
胃がんの99%は、ピロリ菌が原因です。
この事実を「知らなかった」という方。
そして「当たり前だと思ってた」という方も。
ぜひ同僚に、家族に、教えてあげてください。シェアしてあげてください。
「なんで知らなかったんだろう」
と悔やむ方を、そのご家族を、一人でも減らしていきましょう。 ・「胃がんの99%が、ピロリ菌」クラウドファンディングでのご支援はこちら|Ready for
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※ピロリ菌と逆流性食道炎や食道がんの関係性について一部お問い合わせをいただいたため、以下追記させていただきます。(3月1日 22:23)
Q1.ピロリ菌を除菌することで逆流性食道炎や食道癌になる確率が高くなると聞きました。
A1. ピロリ菌除菌後の食道癌発生のリスクがあると言われている理由は、ピロリ菌を除菌をすることによって胃腸の酸分泌が改善するのですが、それが原因で逆流性食道炎になり、さらにはバレット食道(食道が胃の粘膜に置換される)という状態になり、そこから派生して食道(腺)癌になるという欧米の説があるからです。
日本での除菌後の逆流性食道炎の発生率は3~19%と報告されていますが、一時的なものです。さらに、日本の食道癌は95%が扁平上皮癌であり、バレット食道と関係する腺癌は5%程度で、欧米とは異なります。
日本人は欧米人に比べてバレット食道から癌にもなりにくいと言われており、日本人で除菌により食道癌が増えたというデータはありません。以上より、ピロリ菌による胃がんのリスクの方ずっと高く、除菌による胃がん予防のメリットは明らかだと言えるでしょう。鈴木 英雄(消化器内科医師) - -